広陵高校野球部の部内暴行事件と甲子園出場辞退に関するのあれこれが世間を騒がせている。それに触発されてかはわからないが、SNSでは吹奏楽部が野球部の予定に振り回されがちなことへの苦言も見かけた。
ある吹奏楽部がコンクール出場した後、結果を聞かずに野球部の応援に向かったそうで、第一報は「立派だ」と称賛する語調だったが、次第に「美談にしていけないのではないか」という声が上がってきたようだ。

少し前には、「子供の頃にナイター中継によって好きなアニメ番組が中止になって悲しい思いをした層が今は大人になり、その恨みから野球離れにつながっているのではないか」という説も聞かれた。巨人の試合結果で機嫌が左右される父親をモチーフにした父の日キャンペーンが炎上したのも記憶に新しい。
昭和の頃、「野球」というコンテンツの権力は絶対だった。ナイター中継のためなら見たい番組が延期や中止になっても文句は言えないし、家に1台しかないテレビのチャンネル争いでも野球が最優先だった。パソコンも普及しておらず、動画コンテンツを楽しむ手段なんてテレビくらいしかない時代のことだ。
実際に体験したわけでなないが、運動部では「しごき」「指導」という名のもとに暴力やいじめも日常茶飯事だったと聞く。広陵高校の件でも「そんなのはよくあることだ」「大事にするな」という意見を持つ人がいたことからも、すべてとは言わないがそういうケースはあったのだろう。
そんな状況に異を唱える人がいなかったわけではない。確かにいた。しかし、その声は「そういうもんだから(苦笑)」という世間の反応で流されてきたのだ。昭和、平成とそんな時代が長らく続いてきた。
令和になり、やっと異を唱える声に賛同が集まるようになり、問題として認識されるようになった。野球人気のかげりによる影響もあるだろうが、声を上げ続けてきた人のチカラも大きいと思う。月並みではあるが「継続は力なり」、続けることが大きな力になるのだ。

このWebサイトでは「飲食店でお酒以外の飲み物の選択肢が極端に少ない」という現状を変えたくて情報発信をしている。何らかの理由でお酒が飲めない人や、飲まない/今日は飲みたくないという人でも、好きな飲み物を傍らに食事を楽しめる世の中であってほしいのだ。
お酒のメニューが何ページも並んでいて、端っこにソフトドリンクが数種類だけ並んでいる状況は、やはりアンバランスだと思う。居酒屋などお酒を楽しむための飲食店ならば分かるが、そうでない店でも圧倒的にアルコールの種類のほうが多い。
昨今では「ソバーキュリアス」という用語も知られるようになり、大手酒販企業も「スマドリ」と銘打ったキャンペーンを始め、ノンアルコールに力を入れるようになってきた。状況は変わり始めている。今こそ声を上げ続けることが、大切なのだと思う。
「飲まないの? 白けるな~」と糾弾されたこともあった。「ウーロン茶頼むくらいなら水でいいんじゃない?(笑)」と数少ない選択肢さえ奪われそうになったこともあった。「飲めないなんて人生の半分を損してる」と勝手に人生の半分をなかったことにされ、反論すれば「冗談だよ、本気にするなって(苦笑)」と流された人は少なくないだろう。
野球の件然り、一度「当たり前」「そういうもの」になってしまったことを変えるのは難しい。それでも辛抱強く声を上げ続けてきた人がいるのを知っている。その声が今、社会を動かそうとしているのだ。