ハッピーアワーの疎外感

コラム

世の中にはハッピーアワーというものがある。
特定の時間帯にビールをはじめとするアルコール類が激安になるキャンペーンだ。
当然ながら、下戸には何の恩恵もない。

それは別にいいのだ。
誰かが得をしたからといって、自分が損をするわけではない。

ただ少し、疎外感を感じるだけだ。

なぜ店側がハッピーアワーを設けるのかといえば、客が少ない時間帯に客を呼びたいから、だろう。多分。(想像でしかないが)

ハッピーアワーを設けているのは、居酒屋やバーなどのアルコールメインの店舗だけではない。酒を前面に押し出しているわけでもない普通の飲食店でも、ハッピーアワーの看板が出ているのを見かけることがある。

「美味しそうな店だな」と近づいていったときにハッピーアワーの看板が目に入ると、下戸としては入るのを躊躇ってしまう。「店的には酒を飲む客を求めているのかな?」と考えてしまうからだ。

ハッピーアワーの看板は、酒を飲む客を呼び込むためのものだろう。いくら客の少ない時間帯だからといって、飲まない者が入店して歓迎されるのだろうか、と。

もちろん、居酒屋やバーなどアルコールメインの店で下戸が歓迎されるとは思っていない。だけど、一見入れそうに見えた店の前にハッピーアワーの看板を見かけると、「この店も『そっち側』だったか」と身構えてしまうのだ。

今回はハッピーアワーで単価が安くとも、酒を飲む客がこれを期に常連になってくれれば後々酒をたくさん注文してくれるかもしれない。店側としてはそれを見越してハッピーアワーを設けている可能性もあるのではないだろうか。

対して下戸は、どこまでいってもせいぜいウーロン茶1杯くらいしか頼むことはない。(これについてはドリンクメニューの中にそれしか頼むものがないという事情もあるのだが)

考えすぎだと言われるかもしれないが、長年「ドリンクで利益を出しているのだから飲まない客は迷惑だ」「飲まずに食事だけされては儲からない」と拒絶されてきた卑屈な下戸は、迷惑客扱いされることに敏感なのだ。

店側がハッピーアワーの看板を出しているのは、「ビール安く飲めます!」のほうが「ウーロン茶安く飲めます!」よりも刺さりやすいからという、ただそれだけの理由かもしれない。しかし、本当のところは分からない。

酒飲みを求める店に下戸が入ってしまうというミスマッチを防ぎたいのだ。せっかくならばwin-winの関係でありたいのだ。

結局、招かれざる客になってしまうのが怖くてそっとその場を後にし、手近なチェーン店に入るのだった。

プロフィール
この記事を書いたのは……

SoberNetwork代表。フリーランスライターとして、ノンアルコール文化をもっと楽しむ情報を発信中。お酒のにおいは好きだがアセトアルデヒド分解酵素が弱いため、すぐ真っ赤になって具合が悪くなり、あまり楽しめない。世の中の飲食店でもっとアルコールが入っていない飲み物の選択肢が増えればいいのにと思っている。エンドレス烏龍茶はこりごりだ…(炭酸も得意ではない)

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