「お酒を飲まない人お断り」と店頭に掲げている飲食店がある。SNSなどで下戸の人が写真をアップしているのをたまに見かけるが、私も一度だけ実際に遭遇したことがある。
何の因果か、下戸同士の交流イベントに参加するために会場へ向かっている途中のことだった。早く着いてしまった私は時間調節のために下北沢の街をぶらぶらしていた。
そこでおいしそうな餃子店を見つけて店頭をよく見たところ、「お酒を飲まない人お断り」の看板に出くわしたのだ。
不思議と怒りも悲しみも湧いてこなかった。ただ「そうなんだ」と思っただけだ。
店がその看板を出している意図は正確には分からない。餃子とお酒のペアリングを売りにしている店なのかもしれないし、単価の低い客が嫌なのかもしれない。
いずれにせよ、店側はお酒を飲まない人に来てほしくなくて、私はお酒を飲まない人である。その厳然たる事実があるならば、私にできるのはその場を立ち去るだけだ。
これはただのコミュニケーションなのだ。「来ないで」という意思表示に対して、「わかった、行かないね」というコミュニケーション。悲しくもなんともない、喜ばしい成功例だ。
このように意思表示をしてくれる店はむしろ親切だ。何も言わずに入店させておいて、内心では「飲まない客か、ハズレだな」と思われているほうが私は怖い。
だから、酒を飲まない人が来ることを望んでいない飲食店には、積極的に「飲まない人お断り」の看板を掲げてほしいのだ。
言いづらいことではあるかもしれないし、文句を言われるかもしれない。だけど、一下戸である私は相互コミュニケーションを望んでいるし、同様に考えている人もゼロではないだろう。
不幸なミスマッチを減らすためにも、お互いに意思表示とコミュニケーションを図っていきたい。


