なぜソフトドリンクの定番といえばウーロン茶なのか。

コラム

ある意味居酒屋の定番、ウーロン茶

ソフトドリンクの定番といえば、ウーロン茶ですよね。飲みの席で飲まない人たちが「私ウーロン茶で」「僕も」「あ、もうひとつ」「ウーロン茶全部でいくつ?」なんてやり取りをするのを一度は見たことがあるでしょう。

ソフトドリンクメニューの先頭にウーロン茶を置いている飲食店は多いと思います。しかしよくよく考えてみれば、なぜウーロン茶なんでしょう。別に紅茶や緑茶など他のお茶、コーヒー、麦茶でもよさそうなものです。

日本でウーロン茶が幅広く知られるようになったのは1980年代初頭のこと。それまでも本格的な中華料理店では提供されていましたが、1980年に伊藤園が「缶入りウーロン茶」を、1981年にサントリーが同じく缶入りの「サントリーウーロン茶」を発売したのをきっかけに、世の中に広く認知されました。

それまでにない目新しいお茶飲料ということで、「食事に合う」「カロリーゼロで健康的」「異国の香りただようおしゃれなお茶」というイメージ戦略でテレビCMや広告も大々的に展開されました。

1970年代後半からの中華料理ブームの中では、脂っこい料理と合わせるとさっぱり食べられるのもあったでしょう。それまでの飲食店のソフトドリンクメニューといえば、コーラやジュース、メロンソーダなど甘味のついたものが主だったので、中華料理や居酒屋メニューと合わせづらかったのです。

大企業が大々的に売り出すとなれば飲食店側も仕入れ・発注がしやすく、ウーロン茶は多くの飲食店で提供されるようになりました。

一旦受け入れられてしまえば、あとはもうよほどのことがない限り「ソフトドリンクの定番」「当たり前にあるもの」としての地位はゆらがないというわけです。

ウーロン茶以外じゃダメですか?

しかし、お酒を飲めない/飲まない立場からすれば、ウーロン茶以外の飲み物も増えてほしいというのが正直なところ。「食事に合う」「カロリーゼロ(もしくは低カロリー)」「おしゃれでテンションが上がる」「誰でも仕入れやすい」という条件さえ満たせば、ウーロン茶以外でもよいのではないかと思うわけです。

というわけで他にソフトドリンクの定番となる可能性のある飲み物はないか、考えてみました。

緑茶・麦茶

そもそもお茶であれば、日本には昔から親しまれてきた緑茶や麦茶があったはずです。それらがなぜ飲食店で定番にならなかったかというと、家庭であまりにも慣れ親しみすぎて「飲食店でお金を払って飲むもの」という意識が客側にも店側にもなかったのでしょう。今でも食後のお茶を無料で出してくれるお店がありますよね。

しかし、昨今は銘柄や製法にこだわったティーペアリング用の高級緑茶もいくつか発売されていますし、ノンカフェイン飲料としての麦茶は注目されています。これまでの「ただで出てくるお茶」というイメージを払拭できれば、十分可能性はあるのではないかと考えています。

紅茶・コーヒー

紅茶やコーヒーは人気のある飲み物ですが、お酒を提供する飲食店でソフトドリンク欄に並んでいるのは、なぜかあまり見かけませんよね。アイスティーがたまにあるくらいでしょうか。

コース料理で食後に提供されたり、喫茶店でケーキやお菓子と一緒に楽しむものというイメージが強いのでしょうか。どちらも砂糖を入れなければ甘くはありませんし、ほどよい苦味とさっぱり感があるので食事をとりながら楽しんでも問題なさそうに思えるのですけどね。

これらもソフトドリンクの定番として並ぶようになるには、これまでのイメージを一変させる必要がありそうです。一時期「おにぎりに合う紅茶」というイメージ戦略でキャンペーンを展開していた紅茶飲料がありましたが、定番として定着まではしていないように思います。(個人的には、紅茶も緑茶もウーロン茶も元は同じ茶葉なのだから、そりゃ合うだろうと思っています)

それ以外のティー(ハーブティー、ルイボスティーなど)

紅茶・緑茶・ウーロン茶などの原料となる茶樹以外の植物を使ったティー(お茶)です。茶樹ではないのにお茶ってちょっと紛らわしいですね。

リラックス効果やさまざまな健康効果があり、食事にも合い、おしゃれ感もある。条件的には良さそうですが、現状一番ネックとなるのは提供コストではないでしょうか。一般消費者向けのペットボトルは売られていますが、飲食店で提供するなら大容量の業務用パックが流通していないと厳しいでしょう。こだわりのカフェなどでなければ一杯ずつ丁寧に淹れるわけにいかないでしょうしね。

味や香りの好みが分かれそうなのも懸念点です。ハーブティーは独特の香りが苦手という人も多いでしょう。ルイボスティーは比較的くせのない味だと言われていますが、私は苦手なので本当に人それぞれなのでしょう。そう考えるとウーロン茶の万人受けってやはりすごいんだなぁ。

これはルイボスティー。ちょっと赤みがかったきれいな色です。

新しい定番を生み出すのは難しい。が、不可能ではないはず

いろいろと検討してきましたが、そもそも一つ大きな問題があります。それは嗜好の多様化です。

ウーロン茶がソフトドリンクの定番の地位を獲得した昭和時代は、インターネットもまだ一般的になっておらず、みんながテレビを見ていました。テレビCMを流せば国民のほとんどにメッセージを届けることができ、テレビで紹介されれば多くの人に受け入れられて人気になりました。

ソフトドリンク以外にも、「国民的〇〇」が生まれやすい環境だったわけです。

やがて、2000年代以降はインターネットが一般に広く普及し、今では1人が1台スマートフォンを持つようになりました。もちろんそれぞれ見るメディアはバラバラです。万人が好むド定番というものは、昔と比べて各段に生まれにくくなっているでしょう。

新しい定番が生まれなければ、現在の定番=ウーロン茶が今の地位に君臨し続けるわけです。決してウーロン茶が嫌いなわけではありませんが(むしろ好きです)、会食の席で「ウーロン茶しか飲むものがない」という状況がこのままずっと続くのは気が滅入ってしまいます。

難しくなったとはいえ、今もメガヒットが絶対生まれないというわけではないと思うので、ウーロン茶以外にもせめてあと1つ、いや2つか3つくらい、ソフトドリンクの定番といえる飲み物が生まれてくれれば嬉しいんですけどね。

だって、お酒のメニューはあんなに種類があるのに、ソフトドリンクはすみっこに申し訳程度にいくつか書いてあるだけっていうのは悲しいですもん。

もし何かよいアイディアがあればぜひ教えてください。あ、教えなくてもいいです。秘密にしておいてドーンと事業化して新しい定番を作ってくれたら私が喜びます。

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